はじめに

株式会社ネクストビート様よりのご依頼で、コンパクトなFelicaリーダを設計し、試作物を納品させていただきました。ことの経緯は概ねお客様のブログ「Webサービス開発会社でIoT製品を開発した話(プロトタイピング編)」に述べられていますので、そちらをご参照ください。このブログでは弊社側の事情について少しだけ記述します。

今回のお客様であるネクストビート様

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対象読者

  • 弊社の技術にご関心のある方

製作物

概ね8cm四方で厚さが1cmくらい。バッテリはいろいろな都合で内蔵せず、USB給電としました。ケースは3DプリンタでPLAによる造形です。

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製作

依頼事項

お客様がご利用になられていて SONY RC-S390が販売終了とのことでその代替品を希望されました。そのまま製造するには弊社の技術力が足らなかったため、以下の点について妥協していただきました。

  • バッテリーをなしにして、USBによる常時給電とする。

    • ケースの大きさをできるだけ近づけるため。
    • バッテリーを搭載するとPSEマークの取得など時間とコストがかかるため。
  • Felica Readerは評価用ボードのSONY RC-S620/Sを利用する。

    • 自作するためには電波干渉の計測装置が必要であるため。
    • 自作すると総務省からの型式指定を受ける必要があるため。(技適とは異なるルール)

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  • Espressif ESP-WROOM-32を用いる。

    • パッケージのWi-Fiは技適取得済み。
    • パッケージはBluetooth SIGにより認証済み。

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弊社制約事項

弊社は非常に小さな会社でキャッシュフローも潤沢ではないため、以下のことをお願いしました。

  • 大規模生産設備がなく、部品調達のキャッシュも十分でないことから、大量生産は別会社に委託する。
  • お客様との会話の中で、成果物を順次納品させていただき、月末締めで稼働時間チャージとさせていただく。
  • 代わりに細かい修正などもできる限り即時に対応する。

設計・製造

フェリカリーダのRC-S620/S自体が薄いものの、電波シールドの関係もあってそこそこ大きいので、RC-S390同様、薄さを優先した設計を行いました。

  • ESP-WROOM-32およびRC-S620/Sを接続するインターフェースの電子回路設計および基板設計を行う。
  • 基板製造および部品実装はお客様側で手配していただく。
  • 基盤及びRC-S620/Sのレイアウトを考慮したケースを3Dモデルで設計する。

機械により平行作業できるものは平行作業を行い、自分の稼働時間を削減して適切なチャージとなるようにしました。

課題

  • 立像や壺など、底面が小さく背の高いものではあまり造形に問題が起きませんが、今回のように平べったいケースでは造形中に底面が反ってしまうという現象が発生します。3Dプリンタあるあるの事象ですが、プラットフォームに工作糊を塗るなど、良く紹介されている手法で何とか平面を維持して造形できるようにしました。現在はさらに対策を重ねて、ほとんど反ることはありません。
  • 基板製造を委託する際、配線の細さや配線間の幅などにルールがあり、それに従っていないと発注できません。A社でOKな設計書でもB社だとNGということが何回かあり、自分の経験がまだまだ足りていないということを痛感しました。
  • 細かい手戻りが何回か発生しました。これを仕方ないとみるか、もっと減らせるはずだと思うかは、人により異なりそうですが、自分の経験がもっとあれば違った提案によって手戻りを減らせたかもしれません。

まとめ

  • お客様のご希望に十分添えられたかどうかは分かりませんが、設計図や試作品などを納品させていただくことが出来ました。
  • 弊社側の不勉強でご不便をおかけしてしまった部分もあって反省しています。
  • お客様からの依頼の有無にかかわらず、作品製作を積み重ねて経験を積み増していくつもりです。